週刊ザコいおたく

早稲田大学初のおたく情報誌を刊行するサークル「ギークタイムズ編集部」の公式ブログ兼電子版です。毎週金曜日に更新します。

「面白くなさ」から見るゆゆ式

 ゆゆ式というアニメがある。ある人はそれを哲学と言い、ある人はそれを救済と言う。ゆゆ式は4コマ漫画が原作のいわゆる日常系アニメであり、アニメを大まかにジャンルに分類すると「けいおん」「Aチャンネル」「きんいろモザイク」等と同じカテゴリーであろう。ゆゆ式は多くの人に救済をもたらす素晴らしい作品であるに関わらず、(少なくとも)私の周りでは「面白くないから切った」「つまらない」「脳に障害を起こす」という意見が散見される。

 

 ではことアニメにおいて「面白さ」とは一体何なのだろうか?例えば弱虫ペダルのような熱いストーリー、アニメ版アイドルマスターの20話「約束」のような感動するストーリーもそれぞれ違った良さがあるだろう。日常系アニメで言えば上で挙げた「けいおん」は女子高生の日常を描く中に、バンドの活動やライブシーンを盛り込む事で多くのファンを獲得して空前のムーブメントを生み出した。自称アニメオタクをやってる人間でまさかけいおんの楽曲を聞いたことの無い人はいないだろう。

 

 例に挙げたアニメの面白さはアニメに出てくる登場人物や団体の夢、目標に起因する。弱虫ペダルなら「自転車競技インターハイに出場する、優勝する」だしアイドルマスターなら「トップアイドルを目指す」、けいおんなら「楽しい日常を過ごしながらも文化祭等の舞台でライブ演奏を行う」であろう。ではゆゆ式ではどうだろうか?ゆゆ式は日常系アニメのカテゴライズに恥じずまさに女子高生が過ごす日常を描いているだけである。一応情報処理部という部活動が存在するが、大会などがある訳でもなくダラダラと過ごしているだけである。話の軸となる目標やイベントがないのだから、物語が面白くならないのは当然の理であろう。ただこの「面白くなさ」がゆゆ式の本質であると私は考える。

 

 ゆゆ式の物語は唯、ゆずこ、縁の3人の仲良しグループを中心に進んでいく。この3人については、元気印のお調子者のゆずこ、ツッコミ役の唯、マイペースな縁というキャラクターであると思うだろう。ただこれは誰に対してもそうある訳ではない。3人でいるときは割とはっちゃけた印象のあるゆずこだが、あまり仲の良いとは言えないクラスメイトや目上の人と話をする時は礼儀正しい一面を見せるし、唯だってこの2人にするように激しい言動は他人には見せない(縁はいつもマイペースかもしれないが…)。これはこの3人がこの3人である為に、例えばTRPGでプレイヤーがそれぞれ自分の役割を全うするように、3人の間のルールで行動してるのである。故にこの3人にしか分からない空気というものがあるしそれを無理に視聴者に理解させようとはしない。ギャグの描写だって派手なオーバーアクションで視聴者を楽しませるという事はしない。この3人が楽しければそれでいいのだ。

 

 ただしゆゆ式が日常系アニメとして拘ってる部分もある。それは「リアリティ」である。高校が舞台という事で教室でのシーンが多いのだが、実際に教室を借りてモデルを座らせてここからだとこう見えるといった取材を行ったという。その成果か、ゆゆ式は同じ教室の描写でも飽きがこないように多方面からの描写が多く見られる。他には服装も拘りが感じられ、学校ではないシーンで私服を着ている場面は毎回衣装が違う上に、同じ回でも日をまたげば違う服を着ているという徹底ぶりだ。またトイレに行く描写が多いのも特徴でこれも女子高生のリアルな日常を描いているように思える(読者の皆さんの高校時代を思い出して頂きたい。高校が男子校なら中学、小学校と… 毎回休み時間にトイレに行く女子はいませんでしたか?)。また、作品中に唯ゆずこ縁とは別に3人グループが登場するのだが、物語が進んでいくにつれてちょっとずつ打ち解けで仲良くなっていく、女子高生の微妙な距離感も感じられる。

 

 とりあえず週間ザコいおたくの船出として、私の好きなアニメ「ゆゆ式」に対する簡単な考察と紹介を掲載する事にした。ギークタイムズとゆゆ式の発展を願いつつこれで締めたいと思う。(編集員Y)